会長の時間
【2007-2008】
第2093回 例会
日時:2008/04/02
場所:ホテル白菊
会長:山本 恒雄
俳句、短歌の世界では、花といえば桜をあらわします。
桜のうたで最も有名なのはなんといっても
願はくば 花のしたにて 春死なん そのきさらぎの 望月の頃 西行
(どうか、春の桜の花の咲く下で死にたいものだ。
あの釈迦が入滅なさった二月十五日頃に。)この、二月十五日は陰暦ですから今の暦では、丁度三月の終わり頃になるのでしょうか。
作者の西行は平安時代の人で、佐藤義清といい、北面の武士でした。
この役は宮中を警護する若武者の登竜門のようなものです。
馬術、蹴鞠、弓矢、歌に優れた若者だったようです。
同僚にあの平清盛がいました。
年齢もほぼ同じくらいのようです。
その将来を約束された道を歩きながら、西行は二十三歳で出家しています。
荘園制が崩壊しつつある時代です。
保元、平治の乱も経験します。
この時代になにを感じたのか若くして出家をしたのです。
世の中の権力争いには距離を置いて庵を結んで修行をし、和歌という言葉の力を信じる生き方をしたのです。
この世における栄華のむなしさを若くして知ってしまったといえるでしょう。
西行は七十三歳の二月十六日望み通りに桜の元で亡くなっています。
あの栄華を誇った平清盛が六十四歳で狂い死ぬように逝ったのと好対照でした。
そして千年たった今、人の口の端にのぼるのは圧倒的に西行が勝っていると思います。
我々は今、桜の花を見ながら美しさ、儚さ、豪華さ、楽しさ、悲しさ、色々なかんじをもちます。
その主体は花にはなく実は自分の心の裡にあるのです。
平家でなければ人でない、とまで栄華を誇った清盛と、人里を離れ草庵に住み、人の道を極めた西行。
我々は先人に学ばねばならないと思います。
さまざまな こと思い出す 桜かな 芭蕉
芭蕉が故郷、伊賀上野で作った句です。
桜の句の中では最高の作品だと思います。
今夜は親睦委員会のお世話で鈴木さんのお店での花見です。
委員会の皆さんが趣向を凝らしていただいています。
大いに楽しみましょう。