会長の時間
【2012-2013】
第2336回 例会
日時:2013/06/12
場所:ホテル白菊
会長:田中 俊一
6月10日は時の記念日でした。時間を守り規則正しい生活をしようというようなことが、時の記念日の趣旨らしいのですが最近はあまり聞かれません。誰もが思うことでしょうが、あっという間に一年が経ちました。会長もあと3週間です。会長の時間もあと3回です。うれしいような楽しいような複雑な気持ちです。
先週の金曜日長崎に立川志の輔の落語を聞きに行ってきました。立川志の輔はいま日本で最もチケットの取りづらい落語家だそうです。東京などでは発売と同時に売り切れます。長崎も満員でした。独演会と言いながら弟子も二人ほど出演しました。そのせいか予定を30分オーバーしました。そのかわり今度長崎でやる時は30分短めにやるって言っていました。
前振では彼も時のたつのを止める方法はないものだろうか。というようなこと盛んに話していました。新作落語と古典落語を前半後半に分けてやったのですが、昔テレビなどで見た落語とは全然違うものがそこにはありました。とてつもなく面白いのだけど、人にこびてないというか、ちっとも飽きさせない笑いがありました。あるいは古典では泣かせるような話もありました。
時々達人といわれる人を見ると自分をそこに置き換えてみたりするのですけど、例えば自分が若いころから落語家を志して運よくどこかの師匠に弟子入りできたとして、運よく真打になれたとしても、どう努力しても、どう生まれ変わっても、彼の芸にはかなわないだろうなと思わせるものがありました。昔彼がラジオで大友家持をイエモチと呼んだのを聞いて馬鹿な男だと思ったのは取り消さなければなりません。
次の日せっかく長崎まで来たのだからどこに行こうかと思いまして、グラバー園もアジサイが咲いていていいかなと思ったのですが、まだ行ったことがない軍艦島に行ってきました。行ったことがある人には説明する必要はないでしょうが、思った以上に興味深いものでした。廃墟、しかも炭鉱後の廃墟というのは戦後の歴史を目の当たりに見ているようでした。自分の過去を見ているような気持にさえなりました。小さな島に5000人くらいが住んでいたそうですが5000人の人生がまだそこにあるような生活感がありました。当時の喧騒や匂いまでもが漂っているようでした。時というのは一方的に流れるだけで戻ることができません。残るのは思い出だけです。会長になってからを思い出すと恥ずかしいことばかりだった気もしますが、それも仕方ないことだとあきらめています。自慢できるとすれば誰よりも短い会長の時間だったことではないでしょうか